CLEAN DENIM HIO MIYAZAWA

クリーンデニムを纏い、想う。
俳優・宮沢氷魚の、いまとこれから。

宮沢氷魚(みやざわ・ひお)
1994年カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。2017年、ドラマ『コウノドリ』第2シリーズで俳優デビュー。以後、ドラマ『偽装不倫』やNHK連続テレビ小説『エール』、『ちむどんどん』、映画『LEGEND & BUTTERFLY』、舞台『パラサイト』など話題作に出演しつづける。

Photographs: Shohei Kanaya
Styling: Kodai Suehiro
Hair&Make-up: Shinji Konishi (band)
Text: Hisamoto Chikaraishi (S/T/D/Y)
Web Development: Hayato Miura

今年は、大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」や今後公開される作品を含め、いくつもの役に挑戦してきたとお聞きしました。最近俳優としてプラスになった出来事はありましたか?

作品で共演した方、演じる役柄からいつも力をもらっています。一つは、渡辺謙さんとの共演が、僕の俳優としての成長を後押ししてくれています。2021年に舞台「ピサロ」で初めてご一緒しました。稽古に入ってすぐ、あれほどのスター俳優が役に泥臭く向き合い、挑戦してく姿を見て、「自分がこれまで考えて準備してきたものじゃ足りない」と痛感したんです。さらに、謙さんは共演者の中心で作品を一つにまとめながらも、「若い世代には負けない」という空気を醸し出して、僕たちを仲間でありライバルと思ってくださっている感じがしました。僕たちも同じように向き合い、謙さんをライバルと思える時間が本当に幸せで、演技の魅力も学ぶことができました。そして、大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」では、江戸幕府老中の田沼意次(おきつぐ)とその嫡男の意知(おきとも)の親子役として再び共演しています。今回のお芝居でも密に話をして、「昨日より今日の方が絶対レベルアップしているんだから」と、つねに僕をプッシュしてくださいました。僕も意知も同じで、自分の人生でいろいろな経験を経て成長する段階にいる人物だからこそ、謙さんの演技が、言葉が糧になっています。
もう一つは、去年、ドラマ『さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜』で演じた森大輝や、今年公開の映画『佐藤さんと佐藤さん』で演じた佐藤タモツがもつ人間味にリンクできたこと。この二人にはすごく惹かれました。これまで僕が演じる役の多くは、クールだったり、どこか完璧に見えたりする人でした。もちろん演じていて楽しいのですが、このピュアで真面目で不器用な人物を通して、自分の恥ずかしい部分や空回りしている様子や気まずい気持ちなど、“自分の中にあるけど、つい隠してしまうもの“を出せたと思えた時にしっくりきて、また違う演技の面白さを理解できました。日常を過ごしていてふと目に触れたり、体験したりする細かい人間味を表現できる役者でありたいなと思っています。

以前もGLOBAL WORKの撮影の際にインタビューをしましたが、常に前向きで穏やかでブレない印象を受けました。俳優を続ける上で大事にしていることはありますか?

日常の細かい部分をつぶさにみるという意味で、普段なにげなく向けている目線を変えてみたり。「べらぼう」で意知を演じるにあたって、役作りの一環として意識して姿勢を正して目線を上げていたんです。胸を少し開いて顎を引いて、と。その姿勢で愛犬と散歩をしていたら、いつも目線を落として道路や足元などを見ていた景色から、“世界の上半分”の景色が目に入ってくるようになってきた。何気なく通り過ぎていた木々は背が高くて緑の葉が生い茂っていて、空も広くて青い。少し目線を変えただけで、世界に色が増えました。すると、同じ場所でもまったく違った場所に感じるし、それってすごく気分がいいんですよね。どんなものも実は、目にしている以上に見るものがあるのでは、と気づいて、街を歩いたり人と会ったり、自分の生活がさらに楽しく感じられるようになりました。
 あと、昔から大事にしていることといえば、親から子供の頃から言われてきた「謙虚であれ」という言葉。今となって、自分を周りで支えてくれる方、自分ができないことを実践している方にリスペクトの気持ちを持っていれば、自ずと謙虚になると身をもって知っています。僕がやりたい俳優やモデルという仕事は、自分1人では何もできません。〈グローバルワーク〉のブランドアンバサダーも映像作品も、どなたかが「宮沢氷魚と仕事がしたい」と思ってくださったときに初めて、表に出てることになり、僕という存在が生きるわけです。多くのお仕事では、例えばデザイナーや監督や脚本家などのクリエイターがゼロからものを生み出し、そこに参加させていただく。選ばれることはすごく難しく、光栄なこと。自分と「何かを作りたい」と思ってくれたことに、感謝の想いを持ちたい。その気持ちの表れが、謙虚であることだと思っています。